2003年9月1日月曜日

2003年9月

皆さん、いかがお過ごしでしょうか。 すでに8月も去り、夏も終盤。 今年は例年に比べ、涼しく雨の多い夏でしたね。 消費者の皆さんから、冷夏の作物への影響を御心配頂く声、たくさん頂きました。 どうもありがとうございます。 他の農作物と比べ、お茶への冷夏の被害はそれ程ありませんが、生産者にとっては普段と変わらぬ長く厳しい夏でした。 冷夏とは言っても、夏は夏。 畑では雑草たちが、ここぞとばかりに成長し種子をつけてどんどんとその勢力を広げようとしています。 無農薬で、除草剤を一切使用しませんから、夏という季節は私たち百姓にとっては、毎日が雑草との闘いです。 雨の日以外は毎日、畑へ出かけ、除草作業に励みます。 草取りという作業は単純に見えますが、とても地道で、体力、精神力の両方が要求される仕事です。 冷夏の為、灼熱の太陽の下での作業は普段よりも少なかったですが、太陽の出ないどんよりとした天気の日には、天気の良い日にはあまり出てこない蚊やブヨなどの虫の大襲撃を受けます。 せめてもの気休めとして、蚊取り線香を携帯用の容器に入れ、腰に吊り下げて作業をしますが、お腹を空かせた蚊はそれにもめげずに耳元で鳴き続けます。 持っている鍬を放り投げてその場から逃げ出したいという衝動を抑えながら鍬を振るうのです。

             除草と一口に言いますが、雑草の種類が数多く有る様に、除草方法も雑草の性質に応じて異なります。 例えば、カラスウリや山芋などの蔓草は地底に球根があり、地上の蔓をいくら取り除いても、球根が残っている限り、また芽を出します。 掘り起こした球根はアスファルトの上など、地面から離れた場所に捨てなければ、また発芽してしまいます。 その他には、夏に青色のかれんな花を開く‘露草’、ピンク色の小さな花を咲かせる‘おいてけ草’、第二次世界大戦以降に日本に持ち込まれたという‘戦争草’は、とても生命力が強く、除草後に土の上に放置しておくとまたそこに根を張ってしまいます。 ですから、これらの草はコンクリートの上に置いて完全に土から隔離しなければなりません。 他にも、種子を無数につける草や、種子を綿毛に乗せて遠距離までその子孫を飛ばす雑草などと、その生命力と子孫継続のためのエネルギーといったらただ、ただ感心させられます。
この様に夏は暑さと闘いながら除草作業に明け暮れる毎日です。 農薬を散布すれば、数時間で除草作業が終わるところを丁寧に鍬を使って数ヶ月かけて除草するという裏には、私たち百姓の無農薬に対するこだわりと、少しでも安全な食に対する想いが込められています。

2003年8月1日金曜日

2003年8月

二番茶の収穫が7月に終わり、その後、今年の暮れに採れる秋番茶と来年の新茶に備えての土作りに日々励んでいます。 8月上旬から苦土石灰(くどせっかい)を茶の木の根元に散布します。 茶樹は酸性土壌を好むため、土壌の酸性度は4から5(中性=7)が適正で、pHが4以下であれば中和剤を投入する必要があります。 土壌の酸性度が強すぎると後に収穫される芽に悪い影響が出てきます。 例えば、新芽の色です。 健康な茶の木から取れる一番茶の芽は、通常黄緑色をしています。 しかし土の酸性度が強すぎるともっと黄色に近い芽が出てきます。 これを防ぐために、苦土石灰という岩石を砕いたものを撒き、土の強酸性化を防ぎ中和させます。 一年間の中で、秋前の今の時期を苦土石灰の散布に選んだというのにもそれなりの理由があります。 9月から11月にかけての秋の時期に茶樹は来春の一番茶のための準備をします。 ですから、秋前により良い土作りをすることによって、翌年収穫する新芽をより良いものにするのです。 苦土石灰は、水に溶けることによって土に吸収されるので散布は、理想としては雨の降る直前が選ばれます。 また、苦土石灰の特徴として、他の肥料と重複すると窒素肥料が効かなくなるため、石灰投入後から窒素肥料を与えるまでに2週間以上の期間をあけます。 有機肥料と苦土石灰を併せて施用することで、安全で品質の良い作物生産に役立て、良い土作りをし、次期の収穫に備えます。
苦土石灰の名称は、全国で様々な呼び方がされています。例えば苦土カル、苦土タンカル、あるいは苦土カルシウム、他には苦土炭酸石灰・炭酸苦土石灰・苦土炭酸カルシウム・苦灰石・白雲石など全てが苦土石灰のことです。 苦土石灰は、天然のドロマイト原石を原料にしておりカルシウム、マグネシウムの養分補給に使われます。 土の中のカルシウムやマグネシウムが減少してくると、アルミニウムやマンガンなどが溶けやすくなり、作物に必要な養分の吸収や有効微生物の活動が抑えられてしまいます。 苦土(酸化マグネシウム)は光合成において葉緑素の生成に必要な成分で、欠乏すると古い葉が黄化し茶樹の生育が抑えられる為、茶樹の健康な育成には無くてはならない成分です。